
家族葬を執り行う際、誰が費用を負担すべきなのかわからない人も多いでしょう。一般的には、葬儀を取り仕切る喪主が支払いも担当しますが、それぞれの状況に応じてほかの人が負担するケースも少なくありません。
この記事では、費用を負担する人のほか、家族葬にかかる費用の内訳や支払い方法、節約ポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
家族葬にかかる費用とは?

家族葬にかかる費用を以下2点から解説します。
● 家族葬の費用相場
● 家族葬と一般葬の料金の違い
家族葬の費用相場
家族葬の費用は、参列者の数や葬儀内容によって異なります。一般的な相場は約80~110万円前後です。
家族葬は、主に親族や親しい友人のみを招くケースが多く、参加者は10名から30名ほどになることが一般的です。規模の比較的大きな一般葬に比べて、式場の広さや必要なスタッフの人数が抑えられるため、結果として費用も低く抑えやすい特徴があります。
なお、火葬料金を含めると家族葬の総費用は全国平均で約110万円です。しかし、地域や斎場の選び方によって多少の差が出る可能性があります。
とくに都市部では、土地や施設の使用料が高いため、地方に比べて費用が高くなる傾向があります。そのため、自分が住んでいる地域の費用相場を事前に確認することが必要です。
家族葬と一般葬の料金の違い
家族葬と一般葬の費用を比較すると、一般葬のほうが高額になる傾向があります。全国的な平均では、一般葬の費用は約190万円で、家族葬の費用と比べると差額は約80~110万円です。
一般葬は多くの参列者を招くため、広い会場が必要となり、会場費用が高くなりやすいです。祭壇や装飾を設け、参列者に合わせた食事や返礼品を用意する必要がある場合、費用がかさみやすいのも原因のひとつです。
一方、家族葬は規模が小さいため、会場費や食事、返礼品などにかかるコストを比較的抑えやすい特徴があります。また、参列者を限定して葬儀を行うため、広い会場や多数のスタッフが不要であり、一般葬に比べて経済的な負担が少なくなるケースが多いです。
家族葬にかかる費用の内訳
家族葬でかかる費用の主な内訳は、以下のとおりです。
● 葬儀一式の料金
● 寺院に支払う料金
● 会食の料金(飲食接待費)
● そのほかの費用
それぞれの費用について解説します。
葬儀一式の料金
主に以下の項目が葬儀一式の料金に含まれています。
● 斎場の使用料
● 人件費
● 祭壇
● 棺
● 遺影作成
● 寝台車や霊柩車の使用料
このような費用は、参列者の人数や葬儀の規模に影響されづらく、事前に取得した見積もりと比べて差額が少ないのが特徴です。ただし、葬儀プランによっては、火葬料金が含まれていない場合があるため、事前に見積もりをきちんと確認しましょう。
また、斎場の使用料は、プランによって上限が設定されている場合があり、プラン内で追加費用が発生しないように工夫されています。
寺院に支払う料金
葬儀において寺院に支払う料金は、主に読経や戒名の授与に対する感謝の気持ちとして渡す「お布施」が中心です。お布施は、感謝の気持ちを表すため、金額に決まりはありません。
一般的には10万円前後が多い傾向にありますが、場合によっては20万円前後になるケースもあります。また、寺院や僧侶によっては、交通費としての「御車料」や、食事代にあたる「御膳料」が追加される場合があります。
なお、お布施は喪主が直接僧侶に手渡すため、葬儀社の見積りには含まれていません。戒名を授かる際には、そのランクによっても金額が異なるため、事前に寺院へ確認するのがよいでしょう。
そのほかの費用は、霊柩車やマイクロバスの運転手に渡す「心付け」があります。しかし、近年では心付けの習慣がなくなりつつあり、地域によって異なるため、必要か否かの確認が必要です。
会食の料金(飲食接待費)
葬儀における会食の費用は、通夜の後に行う「通夜振る舞い」や、告別式後の「精進落とし」といった飲食にかかる費用が含まれます。これらの会食は、弔問客に感謝を表す場として設けられるものです。
具体的な金額は、参列者の人数や料理の内容に応じて決まります。一般的には、通夜振る舞いの相場は1人あたり約2,000〜3,000円、精進落としは約5,000円です。
なお、会食関連の費用は、葬儀社のプランに含まれている場合がありますが、その場合も会食の有無や参列者数に応じて変動する可能性があります。家族葬では、少人数で行うことが多いため、会食自体をしないケースも少なくありません。
会食を実施するかは、家族の希望や参列者の状況に応じて決めるとよいでしょう。
その他の費用
会葬御礼や香典返しなどの返礼品代が、その他の費用に含まれます。会葬御礼は、通夜や告別式に参列した人々に感謝の気持ちを込めて贈る品で、参列者全員に配布します。
ただし、家族葬の場合は少人数で行われるケースが多いため、会葬御礼を省略するケースも少なくありません。また、香典を辞退した場合は香典返しが不要となりますが、香典をもらった場合は、即日返しや後日返しなどの形式で喪主側が用意しなければなりません。
火葬料金も、地域や火葬場の運営形態によって異なります。公営の火葬場の場合は、料金が約2,000~50,000円であることが多く、民間の場合は50,000~100,000円ほどかかることがあります。
なお、公営の火葬場を利用する場合、故人や喪主がその地域に住民登録しているなどの条件が設けられている場合があるため、注意が必要です。加えて、火葬場によっては待合室の使用料や飲食代が追加で発生することがあるため、事前に確認しておくことが重要です。
それぞれの項目をきちんと把握し、予算に応じて選択することがポイントです。
家族葬の費用負担は誰がする?
家族葬では、主に以下4つのケースで費用を支払うことが多いです。
● 喪主が支払うケース
● 施主が支払うケース
● 親の遺産で支払うケース
● 相続人で分担して支払うケース
それぞれのケースについて解説します。
喪主が支払うケース
葬儀に関する業務、たとえば会場の予約や僧侶への連絡などを基本的にはすべて担当するため、喪主が支払うのが多くの葬儀で見受けられます。誰が喪主になるかは、故人の遺言があれば遺言に基づいて決定します。遺言がなければ、配偶者が喪主になるのがほとんどです。
なお、配偶者が健康上の問題などで喪主を務められない場合は、血縁関係の続柄が上位の者が選ばれます。一般的には、長男が優先され、次男以降や長女がその次に選ばれることが多いです。
施主が支払うケース
喪主がすべて負担するのが困難な場合、施主が負担することもよく見られる事例のひとつです。施主は、基本的に支払いを負担するために立てられることが多く、喪主とは別の役割を果たします。
しかし、施主が葬儀全体の進行を支える役割を担うこともあります。なお、施主は故人と血縁関係がなくても問題ありません。
親の遺産で支払うケース
親の遺産から支払う人も、なかには存在します。具体的には、故人が残した相続財産を利用して費用を賄うことになります。
なお、金融機関は故人の死亡を確認すると、口座を凍結するため、注意しなければなりません。口座が凍結されるのは相続人からの連絡によって行われるため、親の遺産での支払いを考えているなら、十分に留意しておく必要があります。
遺産からの仮払い制度を活用すれば、口座が凍結しても支払いをすることは可能です。ただし、手続きには時間がかかるため、支払いがすぐに必要な場面では、あまり現実的ではありません。
そのため、キャッシュカードの暗証番号がわかる場合は、口座が凍結する前に現金を引き出すとよいでしょう。その際、後々トラブルになるのを防ぐために、ほかの相続人の同意を得ることをおすすめします。
ほかのケースとして、故人が生前に葬儀費用を子どもや配偶者に預けておくことも考えられます。また、葬儀社が提供する積立プランを利用して、生前に葬儀費用をあらかじめ支払っているケースもあります。
相続人で分担して支払うケース
負担を一人に集中させないように、葬儀費用を複数の相続人で分担して支払うケースもあります。たとえば、兄弟・姉妹で分け合うなどが考えられます。
費用の分担方法には、全員で均等に負担する場合と、各相続人の事情に応じて負担割合を調整する場合があります。均等に分担する方法では、相続人全員が同じ金額を支払うため、話し合いがスムーズに進むことが多いでしょう。
一方、各人の経済状況や家族構成を考慮して、負担割合を調整する方法もあります。たとえば、長男が家庭を持っている場合、長男の負担を軽減する目的で、独身の弟や姉、妹が多めに支払うなど、状況に応じた配慮が必要です。
このような分担方法を取れば、一人に負担がかたよらず、家族全体で支える形で葬儀が執り行えるでしょう。
家族葬の費用を分割払いする方法
家族葬の費用は、一括払いだけでなく、分割払いにすることも可能です。分割払いするには、主に以下4つの方法があります。
● クレジットカードを利用する
● 銀行のフリーローン・カードローンを利用する
● 葬儀ローンを利用する
● 後払いシステムを利用する
それぞれの方法について解説します。
クレジットカードを利用する
葬儀費用の支払い方法として、クレジットカードを利用できます。多額の現金を持ち歩くのに抵抗がある人には、クレジットカードでの支払いが適しているでしょう。JCBやVISAといった広く普及されているブランドに対応しているため、利用しやすいのも利点です。
クレジットカードでの支払いは、分割払いのほか、リボ払いやボーナス払いなどを選べるため、それぞれの支払い状況に合わせた柔軟な対応が取れる特徴があります。分割回数が少ない場合、金利手数料がかからないケースもあり、負担を軽減できるメリットがあります。
ただし、すべての葬儀社がクレジットカード決済に対応しているわけではありません。そのため、事前に利用する葬儀社がカード払いに対応しているかを確認しましょう。
また、葬儀費用は高額になる場合があります。クレジットカードの利用限度額をあらかじめ確認し、必要であれば、限度額を引き上げる手続きを済ませておくと安心です。
銀行のフリーローン・カードローンを利用する
葬儀費用の支払いには、銀行のフリーローンや消費者金融のカードローンを利用する方法があります。銀行のフリーローンは、都市銀行をはじめ、信用金庫や労働金庫などでも取り扱われており、多目的ローンという名称で葬儀費用に使えるのが特徴です。
加えて、金利が比較的低いのもメリットといえるでしょう。また、葬儀社との提携業者を気にすることなく、好きな金融機関から融資を受けられるため、自由度が高いです。
一方、消費者金融のカードローンも、用途が限定されていないことが多く、葬儀費用の支払いに問題なく利用できます。カードローンは、審査が早く、契約から融資までのスピードが速いところが利点です。
しかし、金利が高めに設定されているケースが少なくありません。返済額が多くなりがちな点には、十分注意が必要です。
葬儀ローンを利用する
現金での一括支払いが難しい場合や、クレジットカードの限度額を超える場合には、葬儀ローンが便利です。たとえば、オリコやJACCSなどが葬儀ローンに対応しており、分割払いで葬儀費用を支払えます。
葬儀ローンのメリットは、インターネットから24時間申し込みが可能な点です。また、銀行などに出向かう必要がなく、短期間で融資が受けられるのも利点といえます。葬儀の準備が急に必要になる場合や現金の準備が難しい場合であっても、素早く対応できるでしょう。
ただし、葬儀ローンは分割回数によって金利が変動し、最終的な支払額も異なる点には注意が必要です。シミュレーションを前もって実施して無理のない返済計画を立て、支払いが負担にならないようにしましょう。
また、すべての葬儀社がこのローンに対応しているわけではないため、事前に利用可能かどうかの確認が必要な点にも注意しなければなりません。
後払いシステムを利用する
葬儀費用の支払い方法として一般的なのが、後払いシステムです。葬儀が完了した後に、かかった費用が請求される仕組みです。
参列者の数やお布施、その他の追加費用が確定した段階で最終的な金額が決まるため、正確な費用を支払えます。弔問客の数や当日の状況に応じて費用が変動する場合があるため、葬儀後の支払いにすると適切な金額での決済ができ、大きなメリットといえるでしょう。
なお、一部の葬儀社では、葬儀プランの基本料金を前払いし、不確定部分の費用を後から請求する「部分後払い」を採用している場合もあります。その場合、あらかじめ支払うべき金額が決まっているため、予算を立てやすいです。しかし、最終的な支払いが後に発生するため、追加費用に注意が必要です。
家族葬を行うメリットとは?
家族葬は、費用の軽減だけでなく、故人との最後のひとときを大切にできる点や、喪主の負担が少ない点も魅力的です。ここでは、家族葬を選ぶことで得られるその他のメリットについて、詳しく紹介します。
喪主の手間を軽減できる
家族葬の大きな利点のひとつは、喪主の負担を大幅に軽減できる点です。一般葬では、多くの参列者を想定したうえで、香典や返礼品の準備、案内状の送付、式次第の構築など多くの手配が必要になります。
しかし家族葬では参列者が限られているため、こうした準備を簡素化できます。とくに親しい方々だけへの連絡で済み、大勢の方へ訃報を急いで伝える必要はありません。
また、家族葬では香典のやりとりが省略される場合も多く、いただいた場合でもその場で「即返し」を行うことが一般的です。これにより、煩雑な香典返しの準備に時間を取られることもありません。
大切な方を亡くしたばかりで、精神的にも苦しいさなかにある喪主の負担を少しでも軽減できるのは、家族葬ならではの魅力です。
参列者対応の負担が軽減できる
喪主だけに限らず、遺族にとって当日の負担が非常に軽減されることもポイントでしょう。一般的な葬儀では、多くの参列者に対応するために、受付係や会計係などの役割が必要となります。
遺族自身は身だしなみを整えたうえ、途切れることなく訪れる会葬者に挨拶をする必要があるため、落ち着いて故人を偲ぶ時間を取るのは難しいものです。一方、家族葬は参列者が親しい人々に限定されるため、こうした対応による負担が大幅に軽減されます。
故人を偲ぶことに集中できる
葬儀本来の目的は、故人を偲び、その人との別れを惜しむことにあります。しかし、一般的な葬儀の場合、遺族はさまざまな手配や参列者への対応に追われ、静かに故人の死に向き合う時間が確保できないこともあるでしょう。
家族葬では、準備や対応に追われることが少ない分、ゆっくりと故人との最後の時間を過ごすことができます。故人との思い出を語り合ったり、感謝の気持ちを心から伝えたりするなど、静かにお別れをする機会が得られるでしょう。
とくに、大切な方を亡くしたばかりの家族にとって、お別れの時間は心の整理をつけるうえで非常に大切です。
自由な葬儀にできる
形式に縛られない自由な葬儀を行えるのも、家族葬の大きなメリットです。一般葬では慣例や格式に従って進めることが一般的ですが、家族葬では、故人や家族の希望に合わせた個性的な内容が可能です。
たとえば、故人が愛用していた品物を飾るほか、好きだった音楽を流すことなどができます。また、親しい方々が集まる場だからこそ、故人の思い出話を共有しながら、アットホームな雰囲気で葬儀を進行できるでしょう。
家族葬の流れと注意点
家族葬は、一般的な葬儀とは異なる手順や注意点を事前に把握しておくことが大切です。ここでは、家族葬の具体的な流れと、葬儀後に気をつけるべきポイントについて詳しく解説します。
家族葬の流れ
家族葬を円滑に進めるためには、事前準備が重要です。
まず最初に行うべきことは、参列者のリスト作成です。家族のみで行うのか、親族や親しい友人まで招くのかを家族で話し合い、明確に決めておきましょう。この段階で、葬儀の規模や形式がある程度決まります。
次に、葬儀社への連絡です。故人をお迎えする場所や時間を伝え、逝去後の搬送手配を行います。
搬送が完了した後は、葬儀の日程を調整し、お通夜と告別式の準備を進めます。お通夜では故人との最後の時間を過ごし、翌日の告別式で故人を見送ります。
葬儀を終えた後、家族葬に招待しなかった方々には、葬儀が済んだことを報告するはがきを送るのが一般的です。これにより、訃報を知らなかった方への配慮ができます。
家族葬を行った後の注意点
家族葬の特性上、呼ばなかった方々から葬儀後に弔問を受けることがあります。とくに、親しい友人・知人が「故人を偲びたい」と自宅を訪れるケースは少なくありません。
弔問のタイミングは多くの場合、葬儀後の1週間前後です。これに備えて、弔問客を迎えるための準備を整えておくと安心です。
また、弔問を受ける際に香典をどう扱うかも事前に家族で話し合っておきましょう。香典を受け取る場合は、受け取った際のお礼が必要となる一方で、香典を辞退する場合はその旨を弔問客に丁寧に伝えなければなりません。
家族葬に参加できなかった方が故人を偲ぶ機会を求める場合は、後日改めて「故人を偲ぶ会」を開催することも検討してみましょう。このような対応は、故人とのつながりを大切にしてきた方々への配慮になります。
まとめ
家族葬の費用負担は喪主が一般的ですが、状況によっては施主や相続人全員で分担する場合もあります。また、親の遺産を使って支払うことも可能です。
葬儀費用には、葬儀一式の料金や寺院に支払うお布施、会食の費用などが含まれます。費用の支払方法としては、現金で一括払いのほかに、葬儀ローンやクレジットカードの分割払い、後払いなどもあるため、各家庭の状況に合った方法を選びましょう。
葬儀費用を節約するためには、公営斎場を利用したり、規模を縮小したりするのが効果的です。また、無宗教葬を選んだり、補助金や給付金を活用したりするのもおすすめです。
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