寝たきり・点滴のみでの余命は?期間やメリット・デメリット、身体への負担を解説

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高齢のご家族が寝たきりになり、点滴のみで過ごす日々が続くと「あとどれくらい一緒にいられるのだろう」と不安を感じる方も多いでしょう。

かけがえのないご家族とのお別れのときを想像するのは、とても辛く、苦しいものです。 しかし、ご家族との思い出を悔いのないものとするためには、残された時間を今一度見つめ直すのも非常に大切なことです。

本記事では、寝たきりで点滴のみの場合の余命や、点滴治療のメリット、デメリット、終末期にみられる身体の変化について詳しく解説します。 ご家族の状態を正しく理解し、後悔のない選択をするための参考としてご覧ください。


寝たきり・点滴のみでの余命は?

寝たきりの状態で、点滴のみによる栄養補給を行っている高齢者の余命は、点滴の種類や患者の状態によって大きく変わります。

日本老年医学会雑誌の調査によると、末梢静脈栄養(一般的な点滴)のみで栄養を摂取している場合、平均余命は約60日とされています。ただし、これはあくまで統計上の平均値であり、個人の基礎疾患や体力によって大きく変動することを理解しておく必要があります。

点滴の内容によっても余命は変わります。水分と電解質のみを補給する維持点滴の場合は、数日〜2週間程度とされており、末梢静脈栄養よりも短い傾向があります。

一方、カテーテルを用いた経管栄養では、平均余命が827日(約2年以上)とされており、栄養の補給方法によって生存期間に大きな差が生じます。

また、点滴や栄養補給を一切行わない場合、余命は約1週間程度といわれています。ただし、これらの数字はあくまで目安であり、患者本人の状態や病気の進行度合いによって大きく異なります。

大切なのは、数字だけにとらわれず、患者本人にとって何が最善かを医師や家族と十分に話し合うことです。点滴を続けることが必ずしも本人の苦痛を和らげるとは限らず、終末期には点滴を控える選択が穏やかな最期につながる場合もあります。

出典:日本老年医学会雑誌第44巻2号「高齢者終末期における人工栄養に関する調査」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/44/2/44_2_219/_pdf/-char/ja


ご飯が食べられなくなる理由と終末期の体の変化

高齢者や終末期の患者が食事を取れなくなるのは、本人の意思や努力が足りないからではありません。身体が終末期に向けて、自然に変化しているサインなのです。

認知症や終末期に食事が取れなくなるメカニズム

終末期になると、身体はエネルギーを節約するためにさまざまな機能を少しずつ弱めていきます。これは「食べないから亡くなる」というよりも「死が近づいているから食べられなくなる」という自然な流れです。

嚥下(飲み込み)の機能の低下は、終末期にみられる代表的な変化のひとつです。 食べ物や水分を飲み込む力が弱くなり、誤って気管に入ってしまう「誤嚥」のリスクも高まります。認知症が進行すると、食事そのものの意味や、食べ方がわからなくなる場合もあります。

さらに、身体が省エネルギー状態に入ることで、食欲を感じる機能自体も低下していきます。これは苦痛を和らげようとする身体の自然な反応であり、無理に食べさせようとすると、かえって本人の負担が大きくなる可能性があります。

終末期における消化機能の変化

終末期には、消化器系の機能も著しく低下していきます。 消化酵素の分泌が減少し、胃腸の蠕動運動や食べ物を運ぶ動きが弱まることで、食べ物を十分に消化できなくなります。

このような状態で過剰な栄養や水分を摂取すると、身体が処理しきれず、むくみや吐き気、腹部膨満感などの不快な症状が出やすくなります。

とくに、終末期では心臓や腎臓の機能も低下しているため、余分な水分が体内に溜まりやすくなるのです。

さらに肺に水が溜まる肺水腫が起こると、呼吸が苦しくなり、患者に大きな苦痛を与えてしまいます。そのため、終末期においては、必要最小限の栄養と水分の補給にとどめることが本人の快適さにつながります。


食事が取れない場合の栄養摂取方法の種類と特徴

口から食事を取れなくなったときには、いくつかの栄養摂取方法があります。 それぞれの特徴を理解し、ご本人の状態に合わせて医師と相談しながら選ぶことが大切です。

末梢点滴(末梢静脈栄養)

末梢点滴は、手や腕の皮膚のすぐ下を流れる静脈に針を入れ栄養や水分を送り込む方法です。病院で一般的に「点滴」と呼ばれているものの多くはこの末梢静脈栄養を指します。

一日あたり最大で約1,000kcalまで補給できますが、成人が必要とする栄養量の半分にも満たないとされます。そのため、長期間の栄養管理には十分とはいえず、主に短期間の対応や緩和ケアの一部として用いられます。

手術が不要で比較的簡単に実施できる一方、静脈炎などの合併症を防ぐために定期的に針を刺す場所を変える必要があります。 入浴など日常生活への制限は少なく、患者の身体的な負担も比較的軽い方法といえます。

中心静脈栄養(TPN)

中心静脈栄養は、心臓の近くにある太い静脈にカテーテルを挿入して、高濃度の栄養液を投与する方法です。1日あたり最大2,500kcalまで栄養を摂取できるため、長期的な栄養管理に向いています。

カテーテルを挿入する際には小さな手術が必要になるため、末梢点滴と比べると患者への負担は大きくなります。しかし、十分なカロリーを確保しやすい方法なので、回復の見込みがある場合や、一時的に栄養状態を改善したいときに有効です。

一方で、感染症のリスクがあるため、カテーテルの管理には細心の注意が必要です。入浴の際には挿入部を濡らさないように保護するなど、日常生活でも慎重な対応が求められます。

経鼻経管栄養

経鼻経管栄養は、鼻から胃まで細いチューブを通し、液体状の栄養剤を直接胃に送り込む方法です。手術は不要で比較的短時間で開始できるため、口から食事を取れなくなったときの選択肢のひとつになります。

消化管が正常に働いていることが前提ですが、嚥下障害がある患者でも必要な栄養を確保できます。一方でチューブによる鼻や喉の違和感が続き、誤ってチューブが気管に入ってしまう危険もあります。

そのため長期間の使用には適さず、数週間程度までの一時的な栄養補給の手段として用いられることが多い方法です。

胃ろう(PEG)

胃ろうは、腹部から胃に直接小さな穴を開けてカテーテルを通し栄養剤を送り込む装置です。手術で設置する必要がありますが、一度造設すると長期間の使用に対応できます。

嚥下障害がある患者でも誤嚥性肺炎のリスクを抑えながら、栄養を摂取できる点が大きなメリットです。経鼻経管栄養のような鼻や喉の強い不快感が少なく、生活の質を保ちやすい方法といえます。 一方、手術が必要になることや、約6か月ごとにカテーテル交換が必要になることが負担となるでしょう。

胃ろうは「延命」のための処置と受け止められる場合もありますが、実際には口から食べる力を取り戻すためのリハビリ期間を支える手段として用いられることもあります。

腸ろう(PEJ)

腸ろうは、胃ろうと同じように腹部に小さな穴を開けてカテーテルを腸に通し、栄養を届ける方法です。胃を切除した患者や、胃に問題があって栄養を送りにくい場合に選ばれます。

胃ろうと同様に、嚥下障害のある患者でも安全に栄養を摂取できる点が大きな特徴です。 一方で、手術が必要になることや、一定の間隔でカテーテル交換を行う必要がある点も胃ろうと同じです。

入浴の際には挿入部をしっかり保護する必要があり、衣類の選び方なども含めて日常生活にはある程度の制限が生じます。


点滴のメリットとデメリット

点滴は万能な治療ではなく、状況によってはメリットにもデメリットにもなります。 とくに終末期では「何かしてあげたい」という家族の愛情が、結果的に本人の負担になっていないかどうか、冷静に考える視点がとても大切です。

ここからは、点滴のメリット・デメリットについて解説します。

点滴のメリット

点滴にはいくつかのメリットがあります。 とくに誤嚥のリスクを抑えられることや、患者の身体的な負担が比較的少ないことが大きな利点です。


誤嚥(ごえん)を防げる

点滴の最大のメリットは、誤嚥のリスクを避けられることです。誤嚥とは、飲み込んだ食べ物や水分が誤って気管に入り、肺まで流れ込んでしまうことを指します。

高齢者や終末期の患者は嚥下機能が低下しているため、誤嚥を繰り返すと誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。誤嚥性肺炎は重症化しやすく、呼吸が苦しくなることもある危険な状態です。

点滴であれば、経口摂取を控えながら水分や栄養を補給できるため、こうした誤嚥や誤嚥性肺炎のリスクを大きく減らせます。


患者への負担が少ない

末梢点滴は、手術を行わずに血管に針を入れて栄養を補給する方法です。医療従事者がいれば比較的簡単に実施できるため、患者の身体的負担は少ないといえます。

食事のように咀嚼や嚥下にエネルギーを使う必要がなく、体力が低下している患者でも栄養を摂取しやすい方法です。違和感や不快感も比較的少なく、精神的なストレスを抑えやすい点もメリットになります。

点滴のデメリット

一方で点滴にはデメリットもあります。 感染症のリスクや栄養を十分に取りにくいことに加え、終末期ではかえって苦痛を強めてしまう可能性がある点も、あらかじめ理解しておく必要があります。

感染症を引き起こす可能性がある

点滴には感染症のリスクがともないます。高齢者や終末期の患者は免疫力が低下しているため、血管や皮膚に炎症を起こしやすく、悪化すると敗血症に至ってしまうこともあります。

敗血症は発熱や発汗などの症状から始まり、重症化すると臓器不全や敗血症ショックを引き起こし、命にかかわる危険な状態になります。

延命治療として点滴を選ぶ場合でも、このようなリスクを十分に理解しておくことが大切です。


栄養摂取の効率は悪い

末梢点滴では一日に約1,000kcal程度のエネルギーしか摂取できません。これは、成人が健康を維持するために必要なカロリー量の半分以下にとどまります。

そのため、長期間にわたって末梢点滴のみで栄養を補給すると、栄養不足に陥り体力の低下が避けにくくなります。十分な栄養を確保したい場合は、中心静脈栄養や経管栄養など他の方法を検討することが必要です。


終末期だと苦痛を与えてしまう場合がある

終末期になると、身体は水分や栄養をうまく受けつけられなくなります。 体内の水分を処理する力が大きく低下しているため、点滴で水分を入れると余分な水分が体内に溜まりやすくなります。

その結果として足や手がむくんだり、肺に水が溜まる肺水腫を起こしたりします。肺水腫になると呼吸が苦しくなり、溺れているような感覚に近い強い苦痛を感じることがあります。 こうした理由から、医師が点滴の中止を勧めるケースもあるでしょう。

「せめて点滴だけでも続けたい」と願う家族の気持ちはとても自然ですが、終末期ではあえて点滴を行わない選択が、結果的に本人のつらさを軽くすることにつながる場合もあります。


点滴が有効なケースと効果が薄いケース

点滴がどれほど効果を発揮するかは、患者の状態や治療の目的によって大きく異なります。回復の見込みがある一時的な体調不良と、回復が見込めない終末期とでは、点滴に期待される役割や意味合いがまったく違ってきます。

点滴が有効な場合

点滴がとくに力を発揮するのは、一時的な栄養不足や脱水への対応が必要な場面です。たとえば手術後の回復期や急性疾患からの回復期、一時的な嚥下障害があるときには、点滴で体力の回復を支え、経口摂取の再開を早めやすくなります。

治療によって回復が見込める病気の場合には、その期間中の栄養サポートとして点滴が大きな役割を果たします。とくに若い世代や基礎体力が保たれている患者では、点滴による栄養補給の効果が現れやすくなります。

脱水症状を防ぐ一時的な対処としても点滴は有効です。明確な目的や事情があり回復の可能性がある場合には、必要最小限の点滴で様子をみることがすすめられます。

点滴の効果が薄い場合

一方で終末期や回復の見込みがない状態では、点滴の効果はどうしても限定的になります。とくに、がんの末期や非常に高齢の方、認知症の最終段階では、点滴による積極的な介入が必ずしも生活の質を高める結果にはつながりません。

むしろ過剰な輸液が原因でむくみや呼吸困難を招き、かえって患者を苦しめてしまうことがあります。身体が自然に衰えていく段階では、点滴が本来想定されていた穏やかな最期を妨げてしまう可能性もあります。

このような状況では、点滴は緩和ケアの一部として位置づけ、最小限の水分と栄養素だけを補う方向に調整することが望ましいと考えられます。

「枯れるように穏やかに亡くなる」という自然な死のあり方を尊重することも、ときには大切な選択肢のひとつです。本人の苦痛をできるだけ抑え、残された時間を穏やかに過ごしてもらうことを大切にするという考え方もあります。


家族が元気なうちに終末医療について話し合う

終末期を迎えてから慌てて決めるのではなく、家族が元気なうちに終末医療について話し合っておくことがとても大切です。

前もって準備しておくことで、後悔の少ない選択につながります。

事前指示書(アドバンス・ディレクティブ)とは

事前指示書(アドバンス・ディレクティブ)とは、将来自分が意思表示できなくなったときに備えて、どのような医療やケアを望むかをあらかじめ書き残しておく書類のことです。

厚生労働省が推進する「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」の一部として、この事前指示書の重要性が広く認識されています。延命治療を希望するか、苦痛を和らげることを優先したいか、どのような最期を迎えたいかなど、本人の価値観や希望を具体的に言葉にしておく取り組みです。

事前指示書があれば、本人が自分の考えを伝えられなくなった場合でも、家族はその意向に沿った選択をしやすくなります。家族のあいだで意見が分かれることを防ぎやすくなり、医療者とのコミュニケーションもスムーズになります。

エンディングノートなども活用しながら、終末期の医療やケアについて家族と率直に話し合う時間を持つことが大切です。

出典:厚生労働省 アドバンス・ケア・プランニング いのちの終わりについて話し合いを始める (https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000173561.pdf

家族間での終末期ケアの希望の共有

終末期において本当に大切なのは「何をしたか」よりも「どう一緒に過ごしたか」という時間の質です。 点滴をするかしないか、どの治療を選ぶかに絶対の正解はありません。本人と家族が話し合いを重ねたうえで、納得できる選択をすることがいちばん大切です。

家族のあいだで終末期ケアの希望を共有するときは、何よりも本人の価値観や人生観を尊重しましょう。 「できるだけ長く生きたい」と考える人もいれば「苦しまず自然なかたちで逝きたい」と望む人もいます。どちらも間違いではなく、その人らしさを反映した大切な気持ちです。

定期的に話し合いの場を持ち、本人の気持ちが変化したときにも柔軟に対応できるようにしておくことが重要です。あわせて、かかりつけ医や訪問看護師など医療の専門家にも相談し、現実的に選べる選択肢を一緒に整理してもらうと安心です。

このような準備を少しずつ進めておくことが、家族の心理的な負担を和らげ、後悔の少ない見送り方につながります。

メモリードのお葬式では、葬儀に関する相談を受け付けております。 お困りの際にはぜひお問い合わせください。


まとめ

寝たきりで点滴のみの状態での余命は、末梢静脈栄養の場合で平均約60日、点滴を行わない場合は約1週間程度とされています。ただし、これらはあくまで統計上の平均値であり、個々の状態や基礎疾患によって大きく変わります。

本人の意向を尊重しながら、家族全員が納得できる形で最期を迎えられるよう、医療者とも十分に相談しておきましょう。

メモリードのお葬式では、終末期や葬儀に関する事前相談を受け付けています。メモリードグループは関東エリアに210の施設を展開し、217名の一級葬祭ディレクターが在籍しています。

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